伝統派空手の楽しさについて

これまで、あまり伝えられてこなかった、というか、やっていると面白さが伝わる的な感じで、やり過ごされてきたテーマについて書きます。「やってみたら面白い」は空手以外のすべての競技について言えることですから、少しチャレンジしてみようと思います。

語られない理由

空手を始めて20年以上となり、勧誘等でいろんな人に

「空手を一緒にやりましょう!空手は面白いですよ!!」

と言ってきたわけですが、

「じゃあ、空手の何が面白いの?楽しいの?」

に明確に答えてきたことは一切ありませんでした。きっと、今まさに空手を練習しているかもしれない空手(愛好)家たちも、空手の何が面白いのかについて言語化したことはほとんどないんじゃないかなと思います。

なぜ、自分がやっている競技について、その面白さを言語化しないのかと言えば、

  1. その必要性が、部活なり教室への勧誘の際にしか発生しない
  2. 個人競技であるがゆえに、団体に人が少なくとも、あまり困らない
  3. 誰かに空手の面白さを認めてもらいたくて、空手をやっているわけではない
  4. もはや、歯磨きレベルで日常化しすぎて、空手がない生活を考えられない

3,4までになると、この記事にたどり着かないし、たどり着いても読もうとすら思わないかもしれないですね。「好きなものは好き!以上!!」で終わっちゃうからです。

1,2に関しては、たぶん他の競技をやっててもそうなのかもしれないのですが、メジャー競技とは言えない空手では、特に切実です。野球とかサッカーはテレビでも放送されているので、子供のころから何となくでも見ていて、ルールも何となくわかるし、面白そうだなとなるのですが、空手はそうではありません。部活で勧誘に失敗しても、

「空手はマイナーだから、仕方ない。。。まぁ、個人競技だし問題ない。練習しよう! 押忍!!」

自分経験

となるわけで、これが繰り返されると、もはや勧誘しなくてもよくなって、

「空手が面白い理由なんて、考える必要はない。だって、面白いもん。」

となります。

空手、、、の前に格闘技

空手の面白さは、つまるところ格闘技の面白さに集約されてしまいます。なぜかというと、空手は打撃・投げ・極め(関節)といったすべての格闘技術が集約された技術体系だからです。私はできませんが、本当の本当の空手家には武器術もあります。

格闘技の魅力というのは、己の肉体のみで人と人が戦う、その選手たちの強さへの憧れという、本能的な感覚かと思います。表現が悪いかもですが、命の奪い合いを模して人が戦っている時の怖いような、カッコいいような、神経が昂る感じ、お互いが間をとり、隙を伺う時の緊張感などが、やっていて・見ていて、面白いと感じる要素だと思います。これらが球技にない格闘技の魅力です。

当教室に入ってくる男の子では、ウルトラマンとか仮面ライダー、戦隊もの、ロボットアニメを見て、「強くなりたい」と親にせがんでいたという話をよく聞きます。いきなり、システマ(ロシア)とかカンフー(中国)とか、エクスカリ(フィリピン)、カポエイラ(ブラジル)を検索する親は、少ないと思いますので、強くなりたいと親が言われて、思いつくのに、剣道だったり、柔道だったり、空手だったりがあって、自宅に近かったり、子供の「強い」のイメージに近いものが選ばれるんだろうなと思っています。

伝統派(寸止め)空手の楽しさ

さて、やっと本題です。格闘技としての空手の面白さに加えて、当教室で教えている伝統派(寸止め)空手の面白さについて、考えてみます。伝統派空手の特徴は、組手での攻防が寸止めであることと、形試合があることです。以下で、それぞれの特徴と面白さを言語化します。


形については、本当によく考えられていて、それをしっかりやると、身体の軸や重心についての理解が格段に深まります。とはいえ、形は自分との対話で、かつゴールが果てしないので、子供にとっては面白くないものだといえます。指導者がうまく目標設定してあげて、それに応えられる子ならどんどん伸びていきます。形では、骨盤の位置や、肩甲骨の使い方など、本当に細かい部分まで、指導を受けて、自らの身体にフィットさせていく競技です。美しさだけでは、勝てず、力強さはもちろん、技の正確性、技の理解度なども評価されますから、形を究めることは、空手を受け継いでいくことと同義と言えると(私は)考えています。自分の身体との対話は、奥深くて難しく、哲学的でもあって、それが面白いのですが、子供にもそれが伝わればいいなと、、、

あと、これも、子供に伝えづらいし、新規で入会する練習生に語っても、絶対に共感されないことなんですが、空手の受けでも突きでも、武器術が根底にあっての身体操作の技法になっています。例えば、トンファーという「ト」の形をした武器があります。これを持った状態では、敵が振り下ろしてくる棒や拳を受けることができます。その技術が上段受けです。トンファーでの突きは拳の比じゃないくらい痛いです。他、棒術もならば、平安4段とかの打ち下ろしの身体操作はそのまま杖術における打ち下ろしに応用できます。これら武器の扱いの大元は、重心や軸の動きと手足との連動、正確な身体操作の習得が必須になるため、徒手のみで身体操作を覚えて、その次に武器術を習得するとして効率化されました。平和な世に武器が必要となることは少なく、棒がその辺に落ちているなんてことも、滅多にないので、そうであるなら徒手空拳の空手として身体操作のみの技術とした方が、受け入れられやすいというのが現実です。

組手
対して組手は、寸止め防具により、安全に相手との勝負ができます。組手の面白さをまとめると、

  • 短時間で最大の集中をすること
    組手の方が好きな子供の方が多いと思います。ゲーム性が高いからだと思うのですが、そのゲームの特徴として、短時間で勝敗が決まることが、挙げられます。子供の集中力というのは、とても短いので、数分くらいしか持ちません。球技だと、試合が数分ということはほぼないと思うので、プレーに関わらない時などは、割と集中していない時間も長くなる傾向があります。空手では、小学生だと1分くらいで試合は終わりますから、子供にとっては、試合中の全ての時間を集中して取り組むことができるので、やり切った感を得やすいのではないかと思われます。また、勝負は負けることもあれば、勝つこともあって、短時間で達成感なり、くやしさなりを感じることが、面白さになります。
  • チャレンジしやすくて、結果が自分に返ってくる
    加えて、相手からの攻撃も当てられない事が前提なので、いろいろな間合いや技に安全にチャレンジできるところが、子供にとっての魅力かもしれません。指導者としては、そのチャレンジをしっかり認めてあげて、自分でもっと考えたいと思わせてあげられるといいんだと思います。サッカーとかバスケにも1on1があるので、チャレンジできるのは確かですが、空手の場合は、そのチャレンジの結果が試合の結果に直結します。仲間のフォローがないので、リカバリーも自分で考えないといけません。もっとレベルが上がっていくと、短時間でいかに頭をフル回転させて、相手の隙を作ったり、だましたりできるかという駆け引きの要素も楽しさに加わります。
  • 安全だけど、スリルがある
    寸止め・当ててはいけない、つまり試合を考えると、相手の攻撃は全て避けなきゃいけないというスリルがあります。ボクシングとか当てることが前提にあると、当てられてもリカバリーできますが、寸止め空手の場合は、頭部なりポイントになりうる箇所に拳が来た時点でダメなので、よけいに相手の攻撃に対して冷っとするようなスリルを味わうことになります。これを面白いと思えるかはその人次第ではありますが、少なくとも私は、面白いと感じます。

空手のメリット

最後に、軽く、空手のメリットを挙げます。

  • 徒手空拳での技術であるため、とっさの事態への対応にも使える
    間合いが遠いので、やられない・負けない、つまりは、生き残るということを考えると、他の競技と比べての利点が多いかなと考えています。
  • 初期費用・維持費が安い
    空手は道着さえあればできます。その道着もいいやつでも1万円そこそこで買えて、ずっと使えるので、維持費はほぼZERO。格安です。
  • 練習場所を選ばない
    例えば、柔道では畳が必要ですが、空手はアスファルトに素足でもできます。ボール、ゴール、スパイク・シューズは要りません。鏡に映る見た目よりも自分の感覚の方が大切です。

他にもいろいろありますが、本題と逸れるので、こんなところでやめておきます。


いかがでしたでしょうか?
少しでも、空手が面白そうだなと思ってくれたら、嬉しいです。近所の方は、是非見学に来てください。遠方の方も、遊びにいらしたら歓迎します。

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成果を出すために必要なこと

スポーツでも勉強でも努力は大事です。しかし、努力の仕方を間違えてしまえば、成果は出せず、無駄に頑張ってしまうことになりますから、成果を出すためには、努力の仕方も大事です。

計画性

目標・目的管理をしていますか?」という記事を書いているので、成果を出すための計画性については、こちらを読んでいただければと思います。大きな成果を出すためには、細分化した目標の1つ1つが達成できているかどうかを確認しないと、気分次第で、やったりやらなかったりといった感じになり、バランスが悪くなります。

ある能力を取得して、一流になるには1万時間の練習あるいは勉強が必要と言う話は有名です。1万時間といったら、一日に活動できる時間が16時間で、ご飯等の生活のための時間以外をすべて、その事に費やしたとして、625日分、おおよそ2年間分の時間です。一日10時間として3年間分です。

逆に言えば、本気で2年ないし3年間分の努力をすれば、それなりになるということになります。

難しいのは、1日の中で、どれくらいの時間を努力のために作れるかという話です。

大学受験生であれば、勉強さえしていれば許されるので、「1日12時間勉強しました」ができますが、働いていたり、学校の勉強とは別の活動であれば、どうでしょうか?一日のうちに2時間確保できたら、凄いことなのかなという気がします。

ましてや、親の送り迎えが必要な習い事だったりであれば、もはや、週に何時間という世界になってしまいます。

そこで大事なのが、「質」です。

例えば、同じ100本のその場突きを連続でやれば、単に体力あるいは根性の練習になってしまいます。それを、声での号令ではなくて、指導者の突きに反応して突くようにすれば、視覚的な反射が鍛えられます。リズムを常に変えれば、集中力の持続が期待でき、漫然と突くことを防げます。また、本気の10本をインターバルありで10セットやった方が、100本連続で突くよりも、最大筋力の発揮時間は長くなり、効率的です。

量と時間の概念は分けて考える

「量が質に転化する」「質より量」「量より質」いろいろ言われていますが、私としては、どれもナンセンスです。質の良い練習を1日10分よりも、多少質の悪い練習でも1日2時間やった方が、パフォーマンスは高いのは明白です。また、量が質に転化するのも、量を重ねていく中で、少しずつ質を高める工夫があったからこそ成せることと思います。

そもそも、練習(勉強)の量を考えた場合についついやってしまうのは、「何時間練習(勉強)した」みたいに、時間をさも、量として考えてしまう事ですが、これは本質的ではありません。1時間かけて、腕立て伏せを1回やっても、「たくさん練習した」とは言わないですよね。

質×量×時間

成果を出すための要素は、2次元ではなく、時間を含めた3次元で考えるべきだと思います。一本一本がとても丁寧にやるのと、雑にやるのなら、丁寧にやるほうがよいでしょう。1分で60本突くのと、30本突くのでは、60本の方がいいのは明白で、1分やるのと5分やるのなら、5分の方がよいでしょう。

これまとめると、下のどっちがいいかという話に集約されます。

  • 丁寧×60本/分×5分
  • 雑×30本/分×1分

上の2つの式は、質×量×時間です。その人のレベルで量と時間は決めたらいいと思いますので、あくまで考え方の例として理解してください。

具体例

例えば、私どもの空手教室は、一回の練習がだいたい1時間から1時間半です。それを週に2回くらい来てくれる生徒が多いかなと思います。週あたり3時間で、出せ得る最高の成果をださないといけませんから、漫然と基本練習をすることはしません。

まず、遊びのようなケンケン鬼ごっこでフィジカル・体力を鍛えつつ、身体を温めます。その後すぐに、短時間の黙想と礼をします。礼儀作法をルーティン化して身に着けるためと集中力を高めるためです。ケンケン鬼ごっこで乱れた呼吸を整えることもできるため、次の稽古への支障を最小限にします。身体が温まったら、柔軟体操をします。空手の練習で最初に行うことは基本稽古です。基本稽古で体力を奪うことはしません。必ず、引手などのフォームを注意しつつ、集中力を高めるための声掛けをしつつ、様々な工夫で、同じ時間で得られるものが大きくなるようにします。基本稽古に飽きてそうなそぶりがあれば、遊びのようなトレーニングに移します。ふざけてだらだらしているのに対して、「集中して」とか「ちゃんとやろうよ」みたいな声掛けをする暇があれば、狭い空間で、身体の切り返しを多用しなくてはいけない追いかけっこのような遊びでフィジカルの能力を上げた方が1万倍はいい時間の使い方です。

こんな感じで、単位時間あたりの練習の質と量を意識することが肝心です。さらに、自分で時間をコントロールできるなら、一日の中でどれくらいの時間を割けるかも意識するとよいでしょう。


そもそも子供の集中できる時間は5分と割り切って練習を組み立てるようにしないといけません。そうそう、子供も大人も少しだけ難しい何かに挑戦している時が一番集中します。また別の機会に。

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子供に教えるときに大事なこと

子供への指導は本当に難しいですよね。最初から細かく教えても飽きちゃうし、大雑把に教えれば、できた気になってしまうかもしれないし。そもそも、低年齢の子は集中力や理解力に配慮しないといけないし。

この記事では、子供に動作を教える時に大切にしたい心構えを書きます。

心構え

「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。」と、日本海軍の名将・山本五十六は言いました。ビジネスにおけるリーダーが部下を教育する際に有効な心構えとして、色々なサイトで紹介されている言葉です。この後にも言葉が続くのですが、長いのと、子供の教育とは少しづれるので割愛しています。

私がこれまで経験してきた中で、よくある指導は、言葉による説明と、動作の分解の実演でした。

つまり、「言って聞かせて」が最初に来るパターンですね。

でも、何もわからない中で、細かいこと言われても理解できないし、分解された動作を統合するなんてできるわけないと思います。めちゃくちゃセンスある人なら別ですけどね。

たいていは、1を教えて0.1しか理解できないのが、人間です。特に動作経験の少ない子供にとっては、もっと理解度が低くなるかもしれません。

人間は言語的な情報よりも視覚的な情報をより大切に認識します。言葉での説明は最初にするべきではありません。

指導者は怠けてはいないか

未就学児ならなおさら言語的な理解は難しいでしょう。

言葉でも伝えることは、今後の指導を考えると大事ではありますが、

いつものように、「じゃあ、次はその場突きだ」とかいって、号令をかけるだけだと、生徒は何をしていいかわからないので、十分に集中しません。そこで、「違う」だの、「もっと引き手をとって」などと言うだけでは、ほぼ伝わらないでしょう。

指導者は、自ら動作をし、見せながら、一つづつ修正をしていくべきだと思います。号令をかけて、言葉だけでの指導は子供にとっては得るものが少ないので、時間がもったいないです。もっと言えば、指導者の怠慢です。(とはいえ、ずっとは辛いですが、、、)

先日の練習で、どうも集中しきれないないう生徒がいました。はじめは「じゃあ、10本集中して突いてみよう」などと声掛けしていたのですが、どうにもならず、「先生をお手本に一緒にやろう」というと、スッと練習に集中したという、エピソードがありました。きっと、「集中して」とかは体感していないがために、先生の言っていることがいまいちわからなくて、いま何をしたらいいのかが、曖昧だったんだと思います。大いに反省です。

実践

  • やってみせ
  • 言って聞かせて
  • させてみて
  • (できたところは)ほめてやって
  • (以下ルーブ)
  • やってみせ
  • させてみて
  • (たまに)言って聞かせて
  • させてみて
  • ほめてやって

これにつきますね。

加えて、これは、以前の記事「子供に教えるときは、「ゆっくり」「シンプル」が鉄則」でも書きましたが、早い動作を理解することは、大人でさえも困難ですから、シンプルな動きを極力ゆっくりと行う事も大切です。

子供は大人が思っている以上に動きの認知力は低めです。私達が想像する「ゆっくり」な動作の、さらにゆっくりな動作くらいがちょうどいいと思ったほうがいいです。


いかがでしたでしょうか?今回は、教育に責任がある親として、子どもたちに空手を教える指導者としての心構えを再確認するための記事でした。お付き合い下さり、ありがとうございました。

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突きや蹴りは速度よりも無限の加速度が大事

現代の競技空手では高速の攻防が繰り広げられます。総合格闘技においてもスピードのある方の選手が優位に立てるので、どんな選手も瞬発系のトレーニングに余念がありません。しかし、筋肉というのは、悲しいかな、必ず衰えていくものです。それを克服する技術が武術です。この記事では、スポーツ的なスピードよりも武道が大切にしていることについて、考察です。

自動車を運転している時の速度の感じ方

例えば、車で走っている時を考えます。前方を走る車の速度をドライバーはどのように感じているでしょうか?

眼で見た情報の処理として、脳は、前方の車が高速であるほど、実際よりも遅いと感じ、逆に低速であるほど、実際よりも早いと感じているということがわかっています。

加速、減速の時にも同様の感じ方がされており、2倍に加速しても、実際の速さよりも遅く感じ、半分の速度に減速するときは、実際よりも早く感じています。

空手なら・・・

空手における、突きのスピードを規定するのは、身体の速さです。実際には早いのに、遅く、あるいは止まっているとすら感じさせるにはどうしたらよいでしょうか?中途半端な加速では、その努力が報われないということは、上述でお分かりかと思います。

答えは簡単です。

「身体が止まった状態から、一気に最高速度に到達すること。すなわち、めちゃくちゃ加速すること。」が正解です。極論いくと、時間0で最高速度に到達するので、加速度の計算的には無限大になります。少年漫画的にはかっこいい設定ではないでしょうか?(HUNTER×HUNTERのネテロ会長による感謝の正拳突きのイメージがまんまそれです。)

実際には、無限の加速度を達成することは不可能ですから、現実的には思想として、到達させたい場所に身体が「ある」状態を意識して、動くということが大切になります。

脳は、身体を動かす0.2秒前に活動します。その活動の後に筋肉が動き始めるわけですが、意識の上で、動き出しの時点で、「既に目標点に到達している」とすることで、筋肉の動きがそこへの最短距離をいくように動くようになります。

形で練習できる

最初は物理的な話から、思想の話になってしまって、恐縮です。こういう思想的な話は小学生には少し難しいので、指導が大変難しいです。特に組手の中で、これを教えることは不可能かと思うほどです。

そこで登場するの練習方法が形です。形は、まさにキレを出すために、上記の思想を、体現させやすいのです。どういう事かというと、形では、「イチ、イチ、、、」と号令をかけるたびに次の動作へ移りますが、その一挙動をいかに早く・正確に行うかという点に着目すると、単に腕を伸ばすという運動が、武術的な突きに変化させるための練習として、大変有用ではないかと思う次第です。

残念ながら、競技空手では、というか実戦では、武術的な思想だけでは勝てないので、形の選手が組手も強いかというと、必ずしもそうではないので、やっぱり組手での経験も大切ですから、形と組手は空手の両輪としてどちらか一方しかやらないでは、寂しいですね。

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なんで組手でステップするか知ってますか?

現代の競技空手で多用されるステップで、当たり前のようにある技術ですが、その存在意義について考えたことはありますか?この記事では、なぜステップをした方がいいのかについて考察します。

昔の空手にステップはない?

実際にバチコーンって拳を当てることが普通だった寸止め空手では、今のようなステップはしていません。前後に揺れるような脱力から、攻撃の瞬間には両足が地面についた状態で拳がヒットします。(本当は当てちゃいけないハズですが、、、)それが、今のようなスタイルになったのは、神奈川県の重鎮鈴木雄一先生の頃からになります。ほぼ両足が同時にはねており、そこからの回避能力は他を圧倒していました。ショートレンジでの攻防ではステップはしないので、負けるときはその土俵に持ち込まれていたような感じがします。

もっと前の話をすれば、空手の仮想敵は剣でした。剣に対して、いかに勝つかという技術が空手です。競技空手やボクシングのステップは相手との距離を詰めるための技術でもあるため、前後方向のステップがあります。しかし、対剣の場合で、こちらから攻めても99.9%こちらの攻撃が届く前に切られます。徒手空拳の攻撃範囲は点の集合ですが、剣のそれは線の集合です。言い換えれば、空手対剣=線対面で、文字通り次元が違います。

大学時代に剣道部の友人と、竹刀対空手で戦いました。無理です。勝てません。短刀にしてもらって、やっと勝負になりました。それでも、勝ったのは1回で、その時は、こちらから攻めてもうまくいかなかったので、相手の空振りを誘って一気に間を詰めてから投げての辛勝でした。

対剣を想定した場合、こちらから動いて攻撃することは自殺行為ですから、初太刀を避けることに全力を注ぎます。そこで注目されるのが、和道流における、基本組手の受け手の1挙動目のいなしです。いなそうと思ったら、相手の打ってくる場所や軌道を予想しないといけませんから、こちらがステップなどやろうものなら、どの位置にいる自分に対して相手がうってくるかわからないので、予想の難易度が跳ね上がります。2次元の戦いから3次元の戦いになる感じです。(わかりづらいですかね?)

時は変わって現代の空手

さて、昔の空手にはステップはなかったのは当たり前だということがわかりました。では、今の空手の敵はだれか、そう武器を持たない徒手空拳です。線対面が線対線になりました。

この次元の戦いでは、軌道を予想する必要性は低まり、到達点を予想するのみで済みます。この時、ステップをする自分への攻撃点は自分の体表以外にはありえず、相手にとっては、高速で移動する物体の1点を狙わなければならず、難易度があがるので、ステップをするメリットのほうがデメリットを上回ります。

よくね、インターネットの掲示板で「あんなにピョンピョンして、競技空手は実戦的ではない」という趣旨の書き込みがあります。やれやれという感じで眺めている方が多いのですが、こういう内容はあまり減りません。あえて、ここで反証するなら、『蝶のように舞い、蜂のように刺す』ボクシングのモハメド・アリを出したいです。ロングレンジではステップワークで相手を翻弄し、自分は被弾しないように試合を有利に運び、ショートレンジでは足は床からは離れない程度で相手の反撃を食らわない位置へ細かく移動しつつ、しっかり床を踏んでの攻撃をするという戦い方をしていました。これは、当時は特にヘビー級ボクシングでは異端扱いだったのですが、最近は当たり前のような技術です。つまり、「あんなにピョンピョンして。。。」という方は時代遅れという事です。

とはいえ、ステップをしない空手もできたほうがいい

これまで、ステップについてつらつらと、競技空手でステップをしないことはありえない的な書き方をしましたが、ステップしない空手も身に着けたほうがいいです。それは、カウンター狙いの場合です。ステップを止めて、完全に静の状態になると、カウンター狙いがもろバレなのですが、ばれても対策が難しいのがカウンターです。これは身に着けない手はないと思います。カウンターにおけるステップの考え方は攻撃型のステップと若干異なると思うので、別の記事でまた書こうと思います。

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組手のステップ

高速の世界で勝つために、現在最も多用されているのがステップです。初心者ほど誤解しがちなので、覚えてほしいことを書きます。構えのときの足幅とか細かいことは実際に指導者から教えてもらうほうがいいので、割愛します。

ステップでは跳ばない

ステップを最初に教えるときに、練習生が必ずやること。

それはジャンプです。

そう見えるんでしょうが、ジャンプによるステップは体力ばかり消耗して、相手に攻撃チャンスを与えるだけですのでダメ絶対。

正しいステップは、沈むことです。

沈めば跳ねる

(1)ステップではまず、抜重などと呼ばれる過程で、一瞬だけ空中にとどまった後に、重力による落下が起こります。

(2)その後、着地した瞬間には、床からの反力で体重分の力が足に加わります。

(3)足では筋肉の反射により即座にその力を押し返す力が働きます。

この説明だと、「跳べないだろ」と思ったあなたはさすがです。
実は(1)の前に足はすでに体重分の反力を受けていますので、(3)の時には、体重の2倍の筋力が発揮されます。体重計の上でジャンプしてみるとわかります。ジャンプ前の一瞬に体重計の針は体重の約2倍の値を示すと思います。つまり、(3)の状態はジャンプの溜めの一瞬と同じですから、身体はまた、上方に向かい、跳ねることになります。

初心者がステップを「跳ねる」ことと間違えてしまうのは、(1)、(2)が認識できずに(3)のみをステップとしてみてしまうからなのです。

練習法

最近はとにかく高速で動くことが求められます。究極は
「試合中にほぼ体重を試合コートにかけないこと」
です。

とにかく、足が接地している時間を極力短くします。高速で跳ね続けることは体重の2倍の力を常に発揮し続けることと同義ですから、体力の消耗が激しくなります。足腰の鍛錬がとにかく重要です。

それでは練習法です。

  1. 肩幅の2倍くらいのスタンスで立つ
  2. 膝が直角になるくらい腰を落とす
  3. 足の親指と拇指球(親指の付け根の部分、上足底の親指側のこと)だけに体重をかける
  4. 頭の高さを変えないように両足同時に動かして練習場の端から端へ移動する

最初はゆっくりでOKです。自分がよく跳ねるボールになった気持ちで、床からの力を感じて下さい。

もし床からの力が分かりにくければ、大きいジャンプを繰り返してみると良いです。それでも分かりにくかったら、トランポリンでもいいです。

慣れてきたら4を素早くやりましょう。実戦で求められる速度までの練習だと、非凡にはなれません。

私が大学の頃は、頭の高さにロープを張って、それに触れないように移動する練習をしました。応用編として、ダッキングの練習でロープをくぐりながら移動することもやりました。世界王者のアガイエフ選手は、それに加えてくぐったら突きを出すこともしていたようです。


文字だけじゃ、伝えきれないところが、もどかしいです。

実は、武道では「浮身」といって、骨盤内のインナーマッスルの操作で、常に(3)の直前の状態にしておく技術があります。これから教えると、身に着けるまでに時間がかかるので、高速の組手に対応できずないと思います。負け続けたら、誰だって面白くないです。特に子供に教えるのは激難なので、まずはステップでの無重力状態ができるようにして、中学生くらいになって頭で理解できるようになったら覚えればいいと思います。

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練習風景_2021年12月

ホームページを開設してから練習風景をご紹介していなかったので、今後も定期的にご紹介していきます。12月の練習の写真をこのページでご紹介します。

週1回くらいの頻度でも続けていると、上達するから子どもたちには期待してしまいます。

子供に目標物なく突きをさせるよりいい感じだなと、ミットで受けていて思いました。

こちらは少年以上の練習です。初めて2か月たたない練習生も正座が上手になりました。突きも日に日に鋭くなっていくのがわかり、教えていて楽しいです。

板が割れないとけっこう痛いのですが、この子は臆することなく挑み続けました。

空手歴2か月の練習生。鋭い突きでした。

12月17日に例年よりも早かったのですが、今年最後の練習が終わりました。制約のない練習環境を求めて、9月に新しい道場に引っ越しましたが、練習生の皆さまいかがでしょうか?少しでもよい環境になるように今後も頑張りますので、ご意見いただければと思います。

本年中は大変お世話になりました。来年も頑張って空手を練習して、上手になりましょう!

年末年始のお知らせ

師走のはやさを実感する今日この頃です。今年になって道場を移してからも練習生が来てくれていてとても嬉しく思います。

さて、本年の練習日程についてご連絡です。すでに練習生にはお伝えしていますが、以下のようにしたいと思います。

稽古納:2021年12月17日金曜日

稽古始:2022年1月13日木曜日

今年の練習で学んだことを、ご自宅で省みて、身体がなまらないように頑張りましょう。

運動と注意力の関係

反射神経は医学的にそういう神経があるわけではなく、概念的なものになります。反射神経がよいというのは、なにかが起きたときに素早く反応する身体的な事を指すことが多いように思いますが、思考においても重要です。反射とは、眼や耳から入った情報を脳が素早く処理して次の行動に移ることを言います。外界からの情報というのは、意識しないと入ってきません。何かがあると注意を向けていないと、その何かがあった時に素早く情報を取ることができないのは、想像に難くないと思います。では、その注意力は鍛えられるのでしょうか?

今回の記事では、運動と注意力の関係についての論文を見つけたのでご紹介します。

Sport participation and vigilance in children: Influence of different sport expertise – PubMed (nih.gov)

この論文での目的は、

  • 異なるタイプのスポーツ専門性(対人競技スポーツと非対人競技スポーツ)と小児の注意力との関係を調査すること

だそうです。

11歳くらいの男女を対象にしていて、その結果、サッカー選手が陸上選手や対照者に比べて注意力の検査で優れたパフォーマンスが示されました。陸上競技者の注意力はスポーツをしない子と同程度だったようです。

この研究は小児期におけるスポーツ参加と注意力の間に正の関係があること示したものですが、特に対人競技では常に周囲の状況に注意をやる必要があるので、納得感がある結果かなと思います。

空手のような格闘技は対人競技の中でも群を抜いて、相手の一挙手一投足に注意を向けなければならず、瞬間的な判断力も要求される競技ですから、ご紹介したような研究に加わるとすごい結果がでるかもしれませんね。


いかがでしたでしょうか?今回の記事は注意力に関する研究のご紹介です。以前の記事「運動と学力の関係」でもお伝えしたように、もちろん対人競技でない運動も学力と相関することがわかっています。

少し話は逸れますが、最近は中学受験のみならず、小学校受験や幼稚園受験も熱を帯び始めています。子供に少しでもいい環境で学んでほしいという親の願いは未来永劫なくなることはないものですが、そのために子供の貴重な経験が失われないように、冷静になることが肝要なのだと思います。何事もバランスです。

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子供を教えるときには「ゆっくり」「シンプル」が鉄則

子供への指導は本当に難しいですよね。最初から細かく教えても飽きちゃうし、大雑把に教えれば、できた気になってしまうかもしれないし。

この記事では、子供に動作を教える時の工夫について書きたいと思います。

真似る力

子供は大人や友達の動作を真似(模倣)ることで、様々な身体操作を獲得していきます。この真似る力は、個人差はありますが、6歳頃までに完成されます。真似るということは、その動作に自分の身体感覚を合わせるということです。真似るためには、以下の手順をふみます。

  • 見る:視覚的に動作を認識します
  • 解釈する:経験を元にどんな動きの組みあわせかを考える
  • 動く1:実際に動いてみて、イメージした動作との差を知る
  • 動く2:イメージと実際の差を埋めるような動きのパターンを追加して、動く

つまり、真似るためには動きのパターンを多く知っている事が重要なのです。

知らない動きはわからない

いきなり、プロボクサーがシャドウボクシングを見せてきて、「さあ、同じことやってみよう!」って言っても、できませんよね。

子供に動作の指導をする時に、いきなり複雑な動きをしても、理解できませんから、日常生活動作に近いような、なるべくシンプルな動作に分解して、少しずつ新しい動作を覚えてもらいます。

加えて、早い動作を理解することは、大人でさえも困難ですから、シンプルな動きを極力ゆっくりと行う事も大切です。

子供は大人が思っている以上に動きの認知力は低めです。私達が想像する「ゆっくり」な動作の、さらにゆっくりな動作くらいがちょうどいいと思ったほうがいいです。


いかがでしたでしょうか?以前にも書きましたが、子供にとって失敗の経験も必要なのですが、失敗させすぎもよくありません。新しい動作の獲得にはそれこそ多くの失敗がありえるので、失敗の中の少しの成功を引き出してあげることも指導者の役割かなと思います。子育てにも通じるところが大きいかと思うので、参考にしてみて下さい。

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