当教室の生徒さんは、熱心な方が多く、ご自宅で自主練習しているという話も聞かれます。ただし、自主練習はやり方を間違えると、効率を落とすことにもなるので、今回は、特に初心者にとってハードルが高い、蹴りをテーマに練習方法を考えてみたいと思います。
なぜ蹴りが苦手か
多くの初心者にとって、突きはなんとなくできるなと感じても、蹴りになったとたん
「できないorz」
となるのではないでしょうか?
その理由としては
- 片足でのバランスがとれない
- 蹴った時に身体がぶれる
- 蹴った時、引き足の時の勢いを制御できない
- 膝を伸ばしきる感覚・股関節を広げる感覚がわからない
こんなところかと思います。
知能が高くなっていくと、工夫ができるので、少し練習すればコツを掴めるのですが、幼児から小学校低学年までだと、練習量をこなさないとなかなかうまくいきません。そもそも、小学校低学年までの子供は体幹の筋力も弱く、日常生活で片足のみで立ったり、ましてや何かを全力で蹴るなどの経験が少ないので、動作獲得までのプロセスが複雑です。
蹴り動作における補助の仕方
手でもバランスをとる感覚
ケンケンとか、眼をつむって片足立ちが長くできるようにするとか、そういうのもあるのですが、いくら蹴りの練習だからって、せっかく練習するのに、道場でこんなんばっかりだったら、ちょっと困りますよね。
そこで、おすすめしたのが、「手をつないであげる」 ことです。
人間の知覚の中で深部感覚というのは、自分だけの位置情報だけでなく、自分が触れているものの変化だったりも感知します。これを利用して、お互いに構えた状態で近づき、腕相撲のように手を組みます。受け手はこの手を動かさないようにしてあげると、蹴る方は、蹴った際のバランスを足だけでなく手でもとれるようになり、格段にバランスがよくなります。これを繰り返して、自分の体重(重心・バランス)を手でもコントロールする感覚を感じます。
その後、手背同士をくっつけて同様のことをすると、少ない面積かつ手背という体重を預けにくい部位でのコントロールに移ります。
これができたら、人差し指どおしをくっつけるのみにして蹴りをすると、ほとんど自力でコントロールする状態での蹴りなり、最終段階として「自力での安定した蹴り」が出せるようになります。
当教室の生徒にも、よく手を以て身体を蹴らせます。すると、手を持たない時に比べて痛みを強く感じるのと、明らかに蹴りのスピードがあがることが実感されます。(子供は大人に容赦ありません。。。)
蹴る感覚がない
いくら寸止め空手だからって、初心者の段階から寸止めをすると、当てる感覚・肘膝周りの筋肉が伸びて、目標物に当たった際の衝撃による反射などの感覚を覚えられません*。指導者やご自宅であれば親御様は、生徒に蹴りを全力で出させて、きちんと受けてあげた方がよいです。だんだん、「このくらいの距離だと、膝が伸びきったときに、子の位置に足がくる」みたいな感覚を覚えることができますし、衝撃による反力で引き足をとる感覚も養えます。また、初心者、特に子供は、腕や足を伸ばしきった時の筋肉での制御がうまくできないので、まじめに思いっきり空にむかって突き蹴りをすると、関節を痛めます。加えて、力の伝え方がわからず、その場でのバランスを保つことを覚えてしまいます。このことは、練習場での指導の際にも気をつけたいことであり、当教室でもなるべくミットや、時に指導者の身体に突きや蹴りを当てさせるようにしています。
*強くなるために練習しているのに、当てる練習をしないとかありえないです。子供の時から安全性ばかり追い求めると、本当に必要な時に安全を担保できないと私は考えています。
アドバンスト
実際の組手では、蹴り単発よりも突き蹴りの組み合わせで、攻撃を組み立てます。足を自在に操るレベルにならないと、試合で蹴りが決まるかどうかは運ゲーです。そこで、上記の練習を、上段中段回し蹴り・裏回し蹴り・内回し蹴りなど、あらゆる蹴り技の組み合わせの練習に使うことがより高みの練習となります。
一発の蹴りで足を地面に降ろすことなく、最初は2発、できれば5発以上の蹴りの組み合わせができるようになるといいですね。
蹴りの組み合わせでは特にバランスを保ちづらく、最初から補助なしだと、高さや向きなどの調整が二の次になってしまいます。バランスは補助してあげて、蹴りの精度を高めることに使ってください。
端的にまとめてみました。もちろんできるなら蹴りは速いに越したことはありませんが、本記事の練習は全力でやるよりも形をきれいにする目的でやられたほうが良いかと思います。参考になれば幸いです。