これまで、あまり伝えられてこなかった、というか、やっていると面白さが伝わる的な感じで、やり過ごされてきたテーマについて書きます。「やってみたら面白い」は空手以外のすべての競技について言えることですから、少しチャレンジしてみようと思います。
語られない理由
空手を始めて20年以上となり、勧誘等でいろんな人に
「空手を一緒にやりましょう!空手は面白いですよ!!」
と言ってきたわけですが、
「じゃあ、空手の何が面白いの?楽しいの?」
に明確に答えてきたことは一切ありませんでした。きっと、今まさに空手を練習しているかもしれない空手(愛好)家たちも、空手の何が面白いのかについて言語化したことはほとんどないんじゃないかなと思います。
なぜ、自分がやっている競技について、その面白さを言語化しないのかと言えば、
- その必要性が、部活なり教室への勧誘の際にしか発生しない
- 個人競技であるがゆえに、団体に人が少なくとも、あまり困らない
- 誰かに空手の面白さを認めてもらいたくて、空手をやっているわけではない
- もはや、歯磨きレベルで日常化しすぎて、空手がない生活を考えられない
3,4までになると、この記事にたどり着かないし、たどり着いても読もうとすら思わないかもしれないですね。「好きなものは好き!以上!!」で終わっちゃうからです。
1,2に関しては、たぶん他の競技をやっててもそうなのかもしれないのですが、メジャー競技とは言えない空手では、特に切実です。野球とかサッカーはテレビでも放送されているので、子供のころから何となくでも見ていて、ルールも何となくわかるし、面白そうだなとなるのですが、空手はそうではありません。部活で勧誘に失敗しても、
「空手はマイナーだから、仕方ない。。。まぁ、個人競技だし問題ない。練習しよう! 押忍!!」
自分経験
となるわけで、これが繰り返されると、もはや勧誘しなくてもよくなって、
「空手が面白い理由なんて、考える必要はない。だって、面白いもん。」
となります。
空手、、、の前に格闘技
空手の面白さは、つまるところ格闘技の面白さに集約されてしまいます。なぜかというと、空手は打撃・投げ・極め(関節)といったすべての格闘技術が集約された技術体系だからです。私はできませんが、本当の本当の空手家には武器術もあります。
格闘技の魅力というのは、己の肉体のみで人と人が戦う、その選手たちの強さへの憧れという、本能的な感覚かと思います。表現が悪いかもですが、命の奪い合いを模して人が戦っている時の怖いような、カッコいいような、神経が昂る感じ、お互いが間をとり、隙を伺う時の緊張感などが、やっていて・見ていて、面白いと感じる要素だと思います。これらが球技にない格闘技の魅力です。
当教室に入ってくる男の子では、ウルトラマンとか仮面ライダー、戦隊もの、ロボットアニメを見て、「強くなりたい」と親にせがんでいたという話をよく聞きます。いきなり、システマ(ロシア)とかカンフー(中国)とか、エクスカリ(フィリピン)、カポエイラ(ブラジル)を検索する親は、少ないと思いますので、強くなりたいと親が言われて、思いつくのに、剣道だったり、柔道だったり、空手だったりがあって、自宅に近かったり、子供の「強い」のイメージに近いものが選ばれるんだろうなと思っています。
伝統派(寸止め)空手の楽しさ
さて、やっと本題です。格闘技としての空手の面白さに加えて、当教室で教えている伝統派(寸止め)空手の面白さについて、考えてみます。伝統派空手の特徴は、組手での攻防が寸止めであることと、形試合があることです。以下で、それぞれの特徴と面白さを言語化します。
形
形については、本当によく考えられていて、それをしっかりやると、身体の軸や重心についての理解が格段に深まります。とはいえ、形は自分との対話で、かつゴールが果てしないので、子供にとっては面白くないものだといえます。指導者がうまく目標設定してあげて、それに応えられる子ならどんどん伸びていきます。形では、骨盤の位置や、肩甲骨の使い方など、本当に細かい部分まで、指導を受けて、自らの身体にフィットさせていく競技です。美しさだけでは、勝てず、力強さはもちろん、技の正確性、技の理解度なども評価されますから、形を究めることは、空手を受け継いでいくことと同義と言えると(私は)考えています。自分の身体との対話は、奥深くて難しく、哲学的でもあって、それが面白いのですが、子供にもそれが伝わればいいなと、、、
あと、これも、子供に伝えづらいし、新規で入会する練習生に語っても、絶対に共感されないことなんですが、空手の受けでも突きでも、武器術が根底にあっての身体操作の技法になっています。例えば、トンファーという「ト」の形をした武器があります。これを持った状態では、敵が振り下ろしてくる棒や拳を受けることができます。その技術が上段受けです。トンファーでの突きは拳の比じゃないくらい痛いです。他、棒術もならば、平安4段とかの打ち下ろしの身体操作はそのまま杖術における打ち下ろしに応用できます。これら武器の扱いの大元は、重心や軸の動きと手足との連動、正確な身体操作の習得が必須になるため、徒手のみで身体操作を覚えて、その次に武器術を習得するとして効率化されました。平和な世に武器が必要となることは少なく、棒がその辺に落ちているなんてことも、滅多にないので、そうであるなら徒手空拳の空手として身体操作のみの技術とした方が、受け入れられやすいというのが現実です。
組手
対して組手は、寸止めと防具により、安全に相手との勝負ができます。組手の面白さをまとめると、
- 短時間で最大の集中をすること
組手の方が好きな子供の方が多いと思います。ゲーム性が高いからだと思うのですが、そのゲームの特徴として、短時間で勝敗が決まることが、挙げられます。子供の集中力というのは、とても短いので、数分くらいしか持ちません。球技だと、試合が数分ということはほぼないと思うので、プレーに関わらない時などは、割と集中していない時間も長くなる傾向があります。空手では、小学生だと1分くらいで試合は終わりますから、子供にとっては、試合中の全ての時間を集中して取り組むことができるので、やり切った感を得やすいのではないかと思われます。また、勝負は負けることもあれば、勝つこともあって、短時間で達成感なり、くやしさなりを感じることが、面白さになります。 - チャレンジしやすくて、結果が自分に返ってくる
加えて、相手からの攻撃も当てられない事が前提なので、いろいろな間合いや技に安全にチャレンジできるところが、子供にとっての魅力かもしれません。指導者としては、そのチャレンジをしっかり認めてあげて、自分でもっと考えたいと思わせてあげられるといいんだと思います。サッカーとかバスケにも1on1があるので、チャレンジできるのは確かですが、空手の場合は、そのチャレンジの結果が試合の結果に直結します。仲間のフォローがないので、リカバリーも自分で考えないといけません。もっとレベルが上がっていくと、短時間でいかに頭をフル回転させて、相手の隙を作ったり、だましたりできるかという駆け引きの要素も楽しさに加わります。 - 安全だけど、スリルがある
寸止め・当ててはいけない、つまり試合を考えると、相手の攻撃は全て避けなきゃいけないというスリルがあります。ボクシングとか当てることが前提にあると、当てられてもリカバリーできますが、寸止め空手の場合は、頭部なりポイントになりうる箇所に拳が来た時点でダメなので、よけいに相手の攻撃に対して冷っとするようなスリルを味わうことになります。これを面白いと思えるかはその人次第ではありますが、少なくとも私は、面白いと感じます。
空手のメリット
最後に、軽く、空手のメリットを挙げます。
- 徒手空拳での技術であるため、とっさの事態への対応にも使える
間合いが遠いので、やられない・負けない、つまりは、生き残るということを考えると、他の競技と比べての利点が多いかなと考えています。 - 初期費用・維持費が安い
空手は道着さえあればできます。その道着もいいやつでも1万円そこそこで買えて、ずっと使えるので、維持費はほぼZERO。格安です。 - 練習場所を選ばない
例えば、柔道では畳が必要ですが、空手はアスファルトに素足でもできます。ボール、ゴール、スパイク・シューズは要りません。鏡に映る見た目よりも自分の感覚の方が大切です。
他にもいろいろありますが、本題と逸れるので、こんなところでやめておきます。
いかがでしたでしょうか?
少しでも、空手が面白そうだなと思ってくれたら、嬉しいです。近所の方は、是非見学に来てください。遠方の方も、遊びにいらしたら歓迎します。
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