呼吸については以前の別記事「呼吸って知ってます?」で医学的な説明をしました。また、「「一気に」ってどういう状態」では武術的な意味での呼吸について考えています。
呼吸の大切さを認識したところで、この記事では、呼吸の1要素である、肺の能力を向上させる方法をご紹介します。
肺からみた呼吸
まず、肺の構造について説明します。
肺は、肺胞という小さな袋が集まってできた臓器です。一つ一つの袋は気管枝という木の枝のように細かく分かれた空気の通り道の先にくっついています。ブドウの房がたくさん集まったような構造です。肺胞の周りには血管が張り巡らされ、絶えず酸素や二酸化炭素などのガスが交換が行われています。
肺胞の中に新鮮な空気があるからこそのガス交換ですが、肺胞自体に空気の出し入れをする力はありません。空気の出し入れは、横隔膜の収縮等による、胸郭内と外気との圧の差により行われます。すなわち、横隔膜の収縮や肋骨の挙上により胸腔内の空間が広がることで、相対的な陰圧を作り出して外気を取り込み、胸腔内の空間が狭まれば、空気は外に出ていきます。
(この様子を、中学校の理科の実験で観察したことを、書きながら思い出しました。その時はたしか、ペットボトル・風船・ストロー・粘土を使って肺のモデルを作成しました。)
何がスポーツの成績に関係するか
運動能力をあげるには、何を鍛えたらいいでしょうか?
1. 肺活量
2. 呼吸筋
3. 毛細血管
4. 肺胞
我ながら、4択のセンスないなと感心します。正解は2です。
1の肺活量について、肺が取り込める空気の量は一般的に4000ml程度、一流のアスリートで6000ml程度です。
でも、この問題では不正解。
肺活量と運動能力には関連がありません。肺活量が多いのは、アスリートが一般人よりも身体が大きい傾向にあるからです。体表面積あたりの肺活量を出すと、ほぼ同じくらいの値になります。
メカニズムが十分に分かっているわけではありませんが、呼吸筋を鍛えると、運動時の呼吸筋の疲労は、筋交感神経活動を亢進させて、血管収縮が収縮します。すると四肢(特に下肢)への血流が少なくなり、パフォーマンスが低下するのではないかと考えられます。呼吸への負荷をかけた状態での運動において、下肢の血流量の低下、運動パフォーマンスの制限が観察されています。
3,4については、鍛え方があるのかもしれませんが、わかりません。たぶんないと思います。
呼吸筋の鍛えかた
これまでで、呼吸筋を鍛えることが大事だとわかりました。では、どうやって鍛えましょうか?
武道では主に腹式呼吸が使われます。呼吸が相手に悟られないためと冷静になるためです。腹式呼吸では横隔膜の収縮弛緩により胸腔内の圧が変化します。横隔膜を鍛えましょう。
やり方は、簡単です。
- まず、(500mlでも2Lでもいいので)ペットボトルを用意してください。はじめは柔らかい素材のものを使い、徐々に硬くしていきます。風船でもOKです。
- 口にくわえて、力強く腹式呼吸をする
以上!
注意点は、横隔膜の最大収縮力を上げたいので、ある程度息を吸い込んだ状態から始めることです。普通にやると、ペットボトルの容量が肺活量を大きく下回るので、効果半減です。
1日1分でもやれば、1か月後には普段の呼吸が楽に感じられるかと思います。
ちなみに、運動のパフォーマンスに関しては、息を吐くこと(呼気)を大きくすることはあまり効果的ではないようです。
いかがでしたか?格闘技のように瞬発力が要求される運動では、無酸素運動後の回復のための呼吸が必要です。短時間で息が切れてしまう運動なので、呼吸筋が疲労しやすいともいえます。是非、鍛えてみてください。スタミナを上げるという観点では呼吸筋以外の要素も大切ですので、またの機会に書きます。
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