呼吸については以前の別記事「呼吸って知ってます?」で医学的な説明をしました。この記事では、武術的な意味での呼吸について考えてみます。
呼吸は隠す
「息を合わせる」という言葉から連想されるように呼吸にはリズムがあり、そのリズムをお互いに読み合います。音楽であればハーモニーを生み、戦いでは隙きを見つけることになります。
通常の呼吸はどんなに平静にしても、よく観察すると肩の上下や胸郭の膨張・縮小の動きがわかってしまいます。以前にも説明したように、人間は息を吸っているときに攻撃されるのが、一番まずい状態ですから、相手に呼吸のリズムが知られてはいけないのです。
呼と吸の間
呼吸の一連の動きは振り子のようなイメージです。息の吐き始めは大きく吐かれ、徐々に息の量は減少し、後に吸う動作が開始されます。吐くから吸うに移行するときには必ず、気流が0になる瞬間があります。
この間は武術的には居着いている状態であり、好ましくありません。相手の攻撃のタイミングで居着いてしまったら、なされるがままになり、負けてしまいます。
吸うから吐くへの移行時に攻撃されれば、まだなんとかなるかもしれませんが、その逆の瞬間は防御力・攻撃力がともに発揮できない無防備な時間です。
どんな呼吸がよいのか
呼吸を隠そうとするあまり、自然でない呼吸は避けるべきだと思います。深い遅い呼吸をすれば、吸気の時間も長くなりがちです。素早く大きく吸えば、身体の動きで相手にバレます。浅く早い呼吸だと、身体の中の二酸化炭素がなくなりすぎて、体調が悪くなります。
結局は、昔からの云われ通り、「呼吸は自然に」となるのでしょう。
リスクの冒しかた
吸っている間と吐いてから吸うに変わる時が危ないわけですか、なるべく息を吐いている間にリスクを冒して、吸うに変わるまでに安全圏に回避する必要があります。
薩摩示現流では、熟達の剣士は一回の吐く息で何十回もの打ち込みができたそうです。現代の剣道でも、途切れない気合を出しながら竹刀で何回も打ち込むという練習をしているそうです。
武道家なら、それくらいの身体能力(肺活量?)を身に着けなくてはいけないということです。
とはいえ
そうはいっても、100%うまくいくことなんてありません。実戦では吸っている時に攻め込まれる事もあります。だから、稽古では、吸っている時にも動けるように、攻撃でも受けなどの防御・回避動作もできるに越したことはないと思います。
形では受けや突きの動作で息を吐くときに音を出してはいけないというルールになっていますが、あれは武術的には当たり前のことです。何故形の選手が呼気の音を出すかというと、決めが取りやすいからに他なりません。そこで、息を吸っている時に動く練習として、今まで決めの時に出してしまっていた吐く息を吸う息にかえて練習してみたり、一回の吐く息で、数挙動までを行う訓練をしてみてもいいかと思います。組手なら一吐きでの連続攻撃からの回避を練習してもいいですね。
いかがでしたか?呼吸1つ取っても、空手は奥が深いですね。医学部にいた時にもっと興味を持てれば違ったのかななんて思わずにはいられません。皆さんの空手の理解の助けになれば幸いです。
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