人の感情は伝染する

貴方が笑顔を向ければ笑顔が返ってくるように、恐怖や怒りを向ければ相手も同じような負の感情を返してきます。そして、これは脳内お花畑的発想ではなく、ちゃんと研究されていることであります。

ある患者さん

私が担当する患者さんで、前頭葉機能が落ちてしまい、ちょっとしたことで怒ったり、暴力行為をしてしまう方がいます。老人ホームで暮らしているので、日々いろいろな方がケアに入るために関わります。不思議なことに怒りや暴力の被害に遭うスタッフとそうでないスタッフがはっきり分かれています。観察すると、被害に遭わないスタッフは話しの抑揚があまりないかポジティブな感じである一方、被害を受けるスタッフの多くはオドオドしてしまったり、そそくさとしていたりしていて、話し声にもやや緊張がみえるように思われました。

感情も読み取るミラーニューロン

他人の運動動作をあたかも自分がやっているかのように感じて、該当する筋肉を動かそうとする神経があります。以前の記事でもちらっとお話したミラーニューロンという概念です。ミラーニューロンが具体的にどこを核として働く回路なのかはまだ研究段階です。視覚情報が後頭葉に伝えられた後に、その情報を解析するために該当する部位に伝えられるのかもしれないと個人的には考えています。このミラーニューロンは視覚的に読み取ったものはすべて該当する部位に投影しますから、他人の表情から得られる感情すらも自分の感情のように受け取ってしまいます。研究では、特に怒りや恐怖などの負の感情が伝わりやすいという結果が多くでています。進化論的に考えて、種の保存、つまり外敵から自分の所属集団を守ることを第一に考えた場合、喜びなどの正の感情よりも、恐怖などの感情を優先的に伝播させる方が賢明だと思われますから妥当ではないでしょうか?

前述の患者さんも、そうした恐怖を読み取っている可能性があります。人は恐怖や怒りを感じるとドパミンという物質が出ます。簡単にいうと活動的にするホルモンです。通常はドパミンが出過ぎないようにする機構があるのですが、理性を司っている前頭葉機能が低いと、アンガーバーストと言って急にワァッと怒り出してしまいます。子供が癇癪を起こすような感じです。

ドパミンは嬉しい・楽しいといったポジティブな感情の際にも放出されますが、介護で困るのは怒りなので、ネガティブな感情が出やすいスタッフのネガティブな感情に過剰に反応してしまうことは納得できます。

子供では

子供は脳が未発達で、感情の制御が苦手です(特に眠い時)。でも、ミラーニューロンというのは原始的な反応なので、大人の感情は子供にもしっかり伝わってしまいます。だから、子供が駄々をこねた時に「いい加減にしなさい!」と怒りで対応すると逆効果で、むしろ余計に子供の怒りが増幅します。ここで大人の怒りも増幅し、「もう知らないからね」などと言うと、子供は怒りよりも不安を感じ、静かになります。

社会人でも

ネガティブな感情を表に出す上司がいる職場はそうでない職場と比べて生産性が低いという研究があります。また、上司の性格や特徴が職場の雰囲気を規定するという研究結果もあります。

どちらも相反する結果が出ていることは事実ですが、ミラーニューロンの観点からは納得いく結果ではあるかと思います。

上司の影響力は強いので、代え難い部分もありますが、自分が所属する集団の雰囲気が悪い場合に、まず自らの感情を制御し、ポジティブでいられるように振る舞う事も大切なスキルになります。

何が言いたいか

これまでツラツラと書いてきたことをまとめると

他人は自分の鏡かつ自分は他人の鏡

です。

結局人は社会的生き物で、自分だけでは成り立たない不完全な存在です。他人に影響され他人に影響するという循環の中で生きている事を自覚し、子育てや社会生活を送って行ったほうが良さそうです。


いかがでしたでしょうか?皆様の生活を良くするヒントになれば幸いです。

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投稿者: keisuikansagamihara

相模原市中央区の空手教室です。

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