ちゃんと立つ_突くための腰

稽古で基本稽古をした際に、立ち方、というか腰が使えていない練習生がいたので、改めて記事にします。

間違った骨盤の向き

どのようなスポーツも腰を大事にします。腰が動作の支点であり、背骨の形を規定する部位だからです。

先日の練習で見かけられたのは、その場突きで腰が後傾してしまって、腕・脚・体幹の絶妙なバランスで姿勢を保っている様子でした。これだと突きの威力を受け止める場所がないので、当たったときにはバランスが崩れます。

なぜこういうことになるかと言うと、指導者が「腰を落とせ」と言うのみだからです。背もたれ付きの椅子が当たり前の現代では、腰で上体を支える感覚が身につき難いのだと思います。だから、「腰を落とせ」というと、膝関節を曲げてつま先よりも膝頭が先にある状態にして、脚の重心を前に持っていって、腰は後傾、背骨が丸まっている体勢になるのだと思います。

ゴリラの真似をしてみよう

さて、正しい姿勢はどのように作ればいいでしょうか?

参考になるのはゴリラの4足歩行姿勢です。恥を捨て、彼らの真似をしてみて下さい。まずは、観察です。

膝は曲がっています。腰は背中よりもやや上方にあります。背中はほぼ直線的です。腕は伸びていますね。

ゴリラが前に歩くためには、まず両手と片脚で体重を支えつつ、重心が前に向かわなければいけません。そして、片手が前に向かい、体重移動を制御します。この時の手が、まさに空手における突きと思って下さい。空手の突きは体重を拳に乗せて相手に移動させるものですから、向きが違うだけでほぼコンセプトは同じです。

皆様、ゴリラの真似はできましたでしょうか。次は、ゴリラのままで空手をしましょう。

なるべく腰と背骨そして腕の位置関係を変えずに、上体を起こして下さい。片方の手が引手を取れば、

はい、できました。その場突きの正しい立ち方です。

正しい立ち方

ゴリラの真似をして、正しく立てました。この時の体重はどのように支えられているでしょうか?言い換えれば、重力に対してどのように反力を得ているか。

頭と上体の重さは背骨全体が支えてくれます。背骨から伝わる重さは、最後に腰椎の部分でやや後ろ向きに骨盤に伝わります。骨盤に伝わった重さの垂直成分はもちろん脚で支えられるのですが、この時の肝は、後ろに向かう水平成分をどうやって支えるかの問題です。

そこで登場するのが、膝関節の屈曲です。膝が曲がることで(大腿・下腿・足のバランスで)下肢の重さに水平方向の力が生まれます。下肢の水平成分と背骨からの重さの水平成分の比較で、下肢優位でつま先で支えている状態が理想的な姿勢です。

正しい姿勢から生まれる威力

この正しい姿勢から出される突きが当たった時の威力は体当たりに相当します。子供の体重30kgでも無防備で体当たりを受けたら相当痛いと思います。当教室にある5kgのメディシンボールで体感できますので、興味があればくらってください。沖縄空手では(とある本に書いていた)、重力を最大限活かすために地面を踏む(あるいは蹴る)ことはしませんし(浮いてしまうから)。また、腰をひねることもありません。突くより先に腰をひねればその反作用を受け止めるための力が消費されてしまいます。不勉強で怒られそうですが、きっと、首里手の流れを汲み、柔術の要素も入っている近接戦闘術としての和道でも無理な力の使い方はしないでしょうから、考え方は同じだと思います。いつかこのあたりはちゃんと勉強して書きます。


いかがでしたでしょうか?指導した時に袴を例に出したのですがピンとこなかったようで、常識って変わるものなのかと思い、この記事ではゴリラを出しました。言葉で伝えるって難しいですね。あと、和道の基本は無理のない姿勢ですから、「腰を落とせ」はやっぱり誤解が多いと思います。正しくは骨盤を使えです。腰を落としても強い突きにはなりません。

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投稿者: keisuikansagamihara

相模原市中央区の空手教室です。

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