「神速」の音の響きはめちゃくちゃかっこよく聞こえるのは私だけでしょうか?空手でも、稽古に励むのは、相手の反撃を許さないような素早い攻撃を手に入れたいからです。空手の始祖とも言える松村宗昆先生は、「士は神速を尊ぶ」と常々おっしゃっていたようです。格闘技において速さはそのまま重さになりますし、回避能力はなにはともあれ速さが重要です。
強くなりたければ、とにかく「神速」を手に入れるべきですね。
ちなみに、「兵は神速を尊ぶ」は『三国志』「魏志・郭嘉伝」に由来する表現で、「兵は拙速を尊ぶ」は孫子です。これらにおける速さは単に早いだけでなく、「ちゃんと作戦も練ったうえで攻めるときは早くね!」という意味ですが、この記事では、まさにスピードの面での神速を考えます。
神速と言えば
鬼滅の刃では、善逸というキャラクターが雷の呼吸の使い手ということで、神速が技の本質として描かれていました。その中で、神速の出しかたのこつとして、主人公に対して足の筋肉を意識しろというような事を言っていたようです。
が、
空手では、遠くにいる相手に対して攻撃するようなことはありません。なぜなら、素手だからです。同じ身体能力があれば、刀を持つほうが間合いが広く、素手でいくら速く飛び込んでも、剣の間合いを克服するほどのものにはなりえないからです。
空手の神速は、剣よりも近い間合いの中での速さになります。
神速・刹那・一瞬
なんでも定義がないと議論できないので(理系脳をお許し下さい)、神速はどれくらいの時間かを考えていきたいと思います。似たような言葉に「一瞬」とか「刹那」があり、これらには定義があります。一瞬は0.36秒、刹那は0.013秒です。
では、神速は?というと、
神速というのは時間の概念ですが、残念ながら具体的に何秒という定義はありません。そこで、「神の速さ」というぐらいなので、
「目に留まらない速さ」
あるいは、
「目にも見えないくらいの速さ」
を神速だとしてみましょう。
見るという現象は網膜への光の刺激で起こります。人間が認知できるほどの点滅の速さは、おおよそ1/18秒つまり、0.06秒を基準として、これより早い光の点滅は人間の目にはずっと光っているように見えます。つまり、目に見えないほどの変化の時間は0.06秒以下でないといけないということになります。
一流のボクサーのパンチの速度は10m/秒と言われます。0.06秒で到達できる距離は、60cmです。インファイトの距離でのストレートであれば、60cm以内ならまさに「見えない」ほどの速さのパンチになります。一流の半分くらいで5m/秒なら、30cmですので、距離次第では、やれそうですね。
でも、実際の戦いはそんな距離になることの方が少ないですし、
「距離30cmからのパンチが神速だ!」
なんて言っても、納得できませんよね。
そこで、「神速とは反応できないくらいの速さ」と定義を変えます。
見てから反応できる時間
医学的に人間が目で見て、実際に反応できるまでの時間は約0.2秒です。この0.2秒の間は見えていても反応できません。「反応できないくらいの速さ」を神速とすると、0.2秒間で動ける距離がわかれば、神速がどれほどの速さかがわかります。
先ほどのボクサーの例ではパンチの速度は10m/秒でした。0.2秒では2mも動けることになります。5m/秒としても1mです。
空手やボクシングでは相手との距離が1m~1.5mくらいで間合いの取り合いをします。拳は構えによるので、ボクシングのように顎付近であれば、身体の距離と同程度ということになり、空手のように前に突き出すような構えだと長くても1m程度ということになります。
腕だけで1m以上伸ばせるならまさに最強で、肩の初動を読んでもパンチ自体への反応は不可能です。
でも、腕はたかだか80cm程度しかないので、どうやら神速の攻撃のためには別の要素が必要なようです。
長くなったので、今回の記事ではここまでにして、別記事で神速の攻撃を出すための工夫を書きたいと思います。皆さんも神速の攻撃のための別の要素を考えてみてください。
では、失礼します。
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