呼吸は人体の中では自動モードにもなるし、意識的に動かしたり止めたりすることができる臓器の一つです。多くの臓器はその動きに関して、意識的に動かすことができません。(もし、腸を意識的に動かせたら、便秘しなくていいから便利そうですけどね。)でも、不安とか緊張とか集中とか、心にまつわることなら呼吸だけで、なんとかなるかもしれません。
呼吸の仕方によっては、運動能力をあげることもできますし、精神状態をコントロールすることもできます。ほとんどの武道において、言及されているのも、応用可用性が高いからに他なりません。人気アニメの鬼滅の刃でも「○○の呼吸~~の型」といって、呼吸を前面に出していたかと思います。(私も連載当初から好きで読んでいました。。。)
この記事では、呼吸の制御の仕方を簡単に説明します。
武道的な呼吸については、別の機会にします。
呼吸の終わりと始まり
産まれた直後の赤ちゃんは、お母さんからの酸素の供給がなくなり、二酸化炭素の濃度が上がることを契機にして、空気を吸います。直後の呼気が産声とともに始まり、偉大な1サイクルを終えます。
だから呼吸の本当の始まりは「吸うこと」なのですが、実際に深く息を吸い込んでみてください。
まず、息を吐きませんでしたか?
実は、赤ちゃんが最初に吸うことから始められるのは、肺の中に空気がない状態だからできたことなのです。
つまり、呼吸というのは、肺の中の空気をなくすこと(呼気)から始まり、次いで肺の中を空気で満たすこと(吸気)の順で行われていると考えるほうが自然かと思います。(昔の人はよく観察してるなとつくづく思います)
呼吸と自律神経
私たちが普段している無意識の呼吸は自律神経によって制御されています。自律神経には交感神経と副交感神経という2種類があります。簡単に、怖いときや不安なとき、緊張するようなときは交感神経、信頼できる人が側にいるとき、安心しているときは副交感神経が頑張っています。
凶暴なライオンが目の前にいる状況を想像して下さい。身体は今、逃げたい状況です。逃げるためには、走るための筋肉や、いざ襲われたときに抵抗するための筋肉を使えるようにしないといけません。交感神経は筋肉に血液を早く送るために血圧があげ、同時に、心臓を早く動かします。筋肉は酸素がないとすぐに疲れてしまいますから、新鮮な空気の供給が不可欠です。そのために、交感神経は呼吸も早くするように調整します。
でも、交感神経が高まったままだと、動き出すことができません。これが、緊張でガチガチの状態です。ここから抜け出すために出てくるのが、副交感神経ですね。
怖いものを見たときに「キャー」とか「あぁ〜」と声がでますよね。これで、副交感神経が頑張れます。その時に筋肉の緊張が一瞬ゆるみ、動けるようになります。その直後、自分の大きな声を大きな音として、耳が感知すると、また交感神経が頑張るようになって、運動関連の能力が飛躍的に上がります。これに関しては、別記事「気合の意味を知っていますか?」もご覧下さい。
ちなみに、疲れた時とか、嫌なことがある時のため息も、副交感神経を頑張らせて、なんとかリラックスしようという、身体からのプレゼントです。
呼吸と精神
上の例では、自然に出てしまう、叫び声で副交感神経が高まっていました。これは、意識的な発声でも、実現できます。試合や仕事のプレゼンで緊張している時に、深呼吸をして、リラックスしている時の呼吸状態を再現すると、それに合わせて、副交感神経が頑張るので、交感神経の活動を抑えてくれます。
空手の組手試合で、開始の合図とともに「しゃあ!」と気合を出す人がいますが、理にかなってますね。
逆に、猫背とか肥満で呼吸が浅くなりがちだと、交感神経が優位になりがちなので、不安を感じやすくなります。(研究レベルでは、うつ病患者さんには肥満の人が多いとされていますが、どっちが原因なのかは不明です)カラオケでストレスホルモンが減るという研究があります。もちろん楽しいとかそういう雰囲気も大きいと思いますが、呼吸の観点からは、頻回に大きく息を吸い込むことや、声を出す行為によって副交感神経が優位になるからではないかと思われます。
ただ、交感神経と副交感神経は同時に作用していて、そのバランスで身体に影響するので、単純にオンとオフの関係ではありません。だから、これさえやれば、みたいな発想にはならないようにくれぐれもご注意ください。
リラックスするための呼吸
たいていの人は、無意識の呼吸は胸式呼吸と言われるような方法になっています。この呼吸法は浅く短くなりがちです。リラックスするためには副交感神経を高める方法でなくてはいけないので、深くて長い呼吸が重要です。
「吸う量を深く(多く)して、長く息を吐く」
ここで大事なのは腹式呼吸といって、お腹を膨らませるようなイメージの呼吸をすることです。要は横隔膜を大きく動かせるようにするということです。
併せて、目を閉じるとα波がでて、脳がリラックス状態と勘違いしてくれますので、おすすめです。
集中するための呼吸
集中しているときには交感神経が優位であることがわかっています。メジャーリーガがガムを食べながら、プレーしているのをよく見かけるかと思います。あれは、ガムを噛む行為(咀嚼)が交感神経を高めるからです。また、集中しすぎて呼吸を忘れたことありませんか?私はゲームに熱中していて(ファイナルファンタジーⅥでバルガスと戦っていた)、終わった時に「ぷはー」と息を大きく吸い込んで事なきを得た経験があります。鬼滅の刃での全集中の呼吸というのは、肺に大きく空気をため、呼吸を最小限にすることで高い集中を得るというものです。おそらく水の呼吸とか、そういうのは、動きの中での呼気と吸気のタイミングを意識的に変化させることで滑らかな身体操作を実現するというコンセプトなのかなと思っています。もしかしたら、空手の形にもそれぞれの呼吸があるのでしょうかね?すいません。適当です。誰か教えてください。
全集中の呼吸は、戦いにおける肺活量の勝負になってしまうので、勉強とかの実用の範囲での集中のための呼吸では、リラックスしすぎずにリラックスすることを目指します。ここでも腹式呼吸を意識してください。
交感神経と副交感神経をちょうどいいバランス(イメージは50%:50%)に保つことです。究極は、自分が集中している時の呼吸を認識することです。自撮り動画で確認したり、誰かに見てもらったりするのが一番ですが、「さすがにそこまではできないよ。」というのが正直なところかと思います。
概念的に言えば、呼吸が浅くても深くてもダメなら、半々にすればいいんだ的な感じですので、例えば、
「5秒吸って5秒吐く」、数秒後に「5秒吸って5秒吐く」
ような感じですね。自分の肺活量と相談して決めましょう。
いかがでしたか?いろんな呼吸があることをお分かりいただけたでしょうか?
達人レベルになると、自律神経のコントロールで腸の動きや体温ですら調整できるようです。
そこまでいかなくても、知っているだけでできることはありますので、是非、参考にしていただけたら幸いです。
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