お子様に幸せになってほしいと願わない親はほとんどいないと思います。そこで、親は幼児教育や幼少期からのスポーツ・お稽古事を探したりするわけですが、スポーツに関しては「早期から専門的にやらないといけない」なんていうのは嘘です。(勉強に関しては、小さいからと言って記憶力がないわけじゃないし、無理ない程度にやることはいいことだと思っています。)
子供は筋肉も骨も未発達
幼少期からスポーツエリートを養成しようという思想自体は自然かと思いますが、医学的には最適とはいえません。子供は筋肉や骨が発達段階にあるため、過度の繰り返し運動による特定部位への負荷は怪我の発生率を高めてしまいます。子供の時はいろいろな部位をバランスよく、無理なく動かすことをした方がよいのです。中国やロシアはスポーツエリートの育成を国の方針として掲げていて、選手の生活環境や練習環境を整備し、幼少期から選抜と育成をするという国家規模の対策がされていますが、単位人口あたりのメダル獲得数もそれほどです。(何より、多くの実力が上がっていかない選手のその先の人生が心配です。子供の幸せを願うなら、いろいろな選択肢を用意してあげたいと思います。)
身体のためには「道」はいらない
空手道、柔道、剣道、茶道、華道etc…いろいろな「道」があります。(野球道やサッカー道と書かれたTシャツも見かけました)自分が好きな分野で突き詰めていく分には構わないと思いますが、勘違いしたくないのは、「道」は一つの種目だけをやり続けることではないということです。姿勢としてはカッコいいなとは思いますが、特に幼少期の自分の意思が明確でない時期から特定の競技だけをさせることは、その子の隠された才能を見過ごすことにもつながりかねません。教育方針として「道を究める」的な姿勢をもてるように育てたいとお考えだったとしても、「好き」を見つけるために、いろいろなことを経験させてあげた方が、結果的に「好き」が見つかり、「道」を進んでいくような気がしませんか?
和道流開祖の大塚博則先生は船越義珍先生の初期の弟子でした。船越先生は松濤二十訓の中に「道場のみの空手と思ふ(う)な」「あらゆるものを空手化せよ其処に妙味あり」と述べています。私的な解釈では、「空手で学んだ身体操作や考え方は、生活や他の競技でも使ってね」「ほかの動作も空手に応用できないか考えてみると面白いよ」です。(本当は「道でも襲われるかもしれないから安心するなの意味と、外でも礼儀正しくしなさい」「常に空手の事を考えて生活して些細なヒントも見逃すな」かもしれません。今度ちゃんと勉強します。)
どんな運動がよいか
手前味噌で恐縮ですが、空手は、頭の先からつま先までに神経をいきわたらせて、いろいろな動きをする武道です。形一つとっても、身体能力上昇のためのエッセンスが詰め込まれています。また、人気の水泳も重力による負荷がない状態で全身の関節を駆使して行われるスポーツですので、安全性の面からもおすすめです。
なにはともあれ、複数の競技を行うことが、バランスのよい身体の成長を助けます。ベースの競技をもちつつ、他の競技もかけもちするようにして挙げたほうがよいです。あまり深く考えないほうがよいのですが、空手・柔道・体操・水泳のように道具を使わない(身体操作がメイン)かつ個人競技の側面が強いものと、野球・サッカー・ラグビー・ラクロスのようにボール・道具を使う競技で団体競技の側面が強いものの組み合わせがよいと思います。個人種目で能力を伸ばすことが得意な子もいれば、サッカーのMFのように全体を見て最適な場所にボールを運ぶようなプレーが得意な子もいるはずですが、最初のうちは何が得意かなんて親でもわかるわけがありません。子供といえど一人の人格で親のコピーではないからです。
多種目を掛け合わせるメリット
いろいろな競技を経験させたほうがよいと述べましたが、競技の成績にもよい影響はあります。当教室は空手を教えていますので、例えばということで、空手の崩し技の中には体幹を使って相手のバランスを崩すものがありますが、この動きはサッカーやバスケにおいて相手を背負った状態でのボールコントロールや奪取に応用できます。他、空手の刻み突きはその初速が他の競技にはないほどのスピードがありますので、バドミントンの踏み込みやバスケのカットインやスティール時に応用できます。逆に他競技出身者が空手を始めた場合、バスケ経験者の跳躍力やサッカー経験者の蹴りの上達速度、卓球経験者の反射力などで優位に立っていることが多いように見受けます。
競技能力以外でも複数種目を掛け合わせるメリットとして、子供のバーンアウトを防げるという点が挙げられます。一つの種目がだめでも他に逃げ場があるという状態は、精神的なゆとりにつながります。(ある競技で行き詰まっても、別の競技を頑張っていたら、そっちで道が開けたり、行き詰まった方での解決策がわかったりなんてこともきっと起きているんだと思います。)これはスポーツ以外でも重要な考え方で、家族と仕事場以外の居場所がストレスの多い社会には特に重要とされ、アメリカの社会学者レイ・オルデンバーグがサードプレイスとして提唱しました。
子供の習い事の方針の参考になれば幸いです。一番大事なことはお子様の気持ちと楽しいかどうかです。何をやらすにしても親の役割はそのサポートですので、ゆめゆめコーチとして厳しくしないであげてくださいね。
「習い事の見つけ方」に7件のコメントがあります